今回の抜きうちレポートは、キャンプ場ではない。JRVA(日本RV協会)が提唱している「湯YOUパーク」の実体験レポートである。 1泊2,000円以内の駐車料を払えば、その旅館やホテルの施設が泊まり客と同じように使えるという便利なシステムで、 現在これを受け入れている旅館・ホテルの数が全国で約40軒。はたして、これがキャンピングカーユーザーにいかなる楽しみを与えてくれるのか。 まずはわが愛車ギャラクシー号を乗りつけてみた。
やってきましたのは山形県・天童温泉にある「滝の湯ホテル」。勝手が分からないので、ホテルもそろそろ近いだろうという頃合を見計らい、電話を入れてみた。 「あの、そちらでキャンピングカーによる駐車場泊を受け付けているんでしょうか?」 おそるおそる尋ねると、「はい、うけたまわっております」という丁寧な女性の声。「ただ、駐車場が空いているかどうか確かめますので、 しばらくお待ちいただけますか?」とのこと。やや間があって、「大丈夫です。お待ちしております」との返事。
ホテルを間近に見て、ヨヨと驚いた。日頃慣れ親しんできた日帰り温泉、スーパー銭湯とはひと味違うたたずまい。 どちらかというとメルセデス、セルシオ系で乗り付けた方が似合いそうな、格式と格調を重んじる本格的なホテルである。
まずはクルマをエントランス脇に止め、ひとまずフロントへ。玄関脇に下足箱とか、アイスクリームの自動販売機などがないところが、やっぱりホテルだ。 料金を払い、名前と住所を記帳する。料金は駐車場使用料2,000円+消費税および入浴料500円なりで計2,600円。
「今までキャンピングカーで来たお客さんはどのくらいいるんでしょうか?」と尋ねると、「まだ3〜4組。 でもお仲間同士で5〜6台一緒に来られた方もいらっしゃいました」とのこと。湯YOUパークも徐々に普及してきているようだ。 |
 |
まずはクルマに戻り、安眠できそうな駐車スペースを探す。大旅館というのはありがたいもので、 大型バスが止まれるような駐車スペースがふんだんにある。なるほどこのスペースが空いたままならもったいない。 ホテル側としては、お風呂を利用してくれるだけでも、キャンピングカーで泊まってもらえればありがたいという気持ちになるのかもしれない。
お風呂は24時間OK。食事もお蕎麦のような軽食なら深夜12時半まで大丈夫とのこと。それはありがたいが、テレビが見たい! なんとこの日はW杯の日本=ロシア戦が行なわれる日だったのだ。すでに試合開始まであと10分。 広いロビーには大型テレビが鎮座ましましているが、スイッチが入っていない。
「テレビ見ていいですか?」と聞く。従業員の人は待ってました!とばかりにスイッチを入れてくれた。 お客さんの要望がない限りテレビはつけないらしい。ようやく従業員である自分たちもチラチラ見ることができると思ってくれたのだったらうれしい。 宿泊客はみな自分の部屋でテレビ観戦しているらしく、100人も座れそうなロビーのソファには誰も座っていない。 大画面前の特等席にふんぞり返り、日本人サポーターたちの大合唱に聞き入る。結果は、日本代表が歴史的なW杯初勝利をあげることで終わり、気分を良くして大浴場へ。
これがまた本格的なホテルのお風呂はかくあるべしという格調の高いもの。黒い大理石で縁取られた湯船には、きれいなお湯が、鏡を張ったように間接照明の明かりを反射しておごそかにたたえられている。露天風呂の前には、前衛彫刻家が刻み込んだといわんばかりのアートしている岩が壁面をおおい、有名な設計者がデザインしたお金のかかっているお風呂だぞ!という気合いのようなものが漂ってくる。テイストはモダン・クラシカル・ジャパニーズ。なんのこっちゃという表現だが、和風のインテリアを洗練されたデザインで実現した浴場とでもいっておこうか。そういうつくりを眺めながら湯に浸かるだけで、やっぱり普通の日帰り温泉施設にはないリッチさを満喫できるのは確かだ。これで入浴料500円なら安い。ただしキャンピングカー泊のお客には、手ぬぐい・バスタオルの支給までないので、それだけは自前で整えておく必要がある。
さっぱりした体を夜風にさらしたいばっかりに、駐車場へはすぐに戻らず、ふらふらと町中へ。オフシーズンの日曜の夜とあってか、人通りは少ない。週末なら煌々と街路を照らすはずのスナックの看板も灯が消えている店が多い。影のように近づいてきたキャバレーの呼び込みオジサンに、「どちらにお泊まりで?」と尋ねられる。「滝の湯ホテル」と言ってから、その駐車場…と言いよどむ。「あそこは天皇陛下も泊まられるホテルなんですよ」と、オジサン。なるほど、どうりで格調が高いわけだ。路上で煙草をふかしながら、しばらく立ち話。
「お遊びの方はいかがです?」という丁重なお誘いを受けたが、コンビニで買った缶ビールとツマミを無駄にしたくなかったので、さらば友よ!
翌日は、稲本の決勝ゴールの記事を読みながら、ホテルのロビーでコーヒーとホットケーキの朝食。キャンピングカーで駐車場から出るとき、そこの従業員の女性がホテルの泊まり客に対する対応と変わらない深々としたおじぎを送ってくれた。「またお越しください」と、優しい笑顔。
一流ホテルの条件とは何か?それはホスピタリティが行き届いていることだ。施設の豪華さ、食事のおいしさ。そういうものもあるだろう。しかし肝心なのは、親切なもてなしである。天童市の滝の湯ホテルは、1泊2,000円の駐車泊のお客だろうが、スイートルームのお客だろうがわけへだてなく平等に歓待してくれる。そう考えると、この「湯YOUパーク」という宿泊システムも、一流ホテルのホスピタリティを享受することも可能な新しいキャンピングカー活用術として、大いに利用できそうだ。 |